2019年2月、東京新宿の「そっちのルノアール」で行われた第2回愛川レッドカーペット ムービー部門 最優秀賞「にちじょう」の映像制作チームOR→Pのメンバーへのインタビューも、いよいよ折り返しです。
OR→Pの結成などについてお聞きした【うらばなし1】。ストーリーが生まれたきっかけや伏線などについてお聞きした【うらばなし2】、客演の俳優さんたちのこと、ロケ当日のエピソードなどについてお聞きした【うらばなし3】。前回の【うらばなし4】では、冒頭から「ぜんじつ」までのシーンを振り返っていただき、各シーンに込めた思いなどについてお聞きしました。観る人の違和感をどんどん膨らませつつ、ギリギリのラインで違和感として保たせるよう、土井克馬監督が仕掛けたセリフ。その背景には、土井監督独特の「オバケ観」があったのです!
今回の【うらばなし5】~さつえい②~ では、「よくあさ」から別れのシーンまでを振り返っていただきながら、前回触れた独特なオバケ感にも通じる、土井監督が制作の中で大切にしていることをお聞きして参ります!
悲しいのではなくて、田舎の家族がまたおいでねって。
シュ 「よくあさ」のシーン。面白かったのが、元々掛けられていた俳句を残して撮影したところ。
土井 絵としては、後ろでエイエイオーッてやってる古い家族と、それを見ている新しい家族の子供を見せたかった。俳句の内容(花笑う土ほころびて雨上がり)も温かい雰囲気を醸し出しているし、古民家に俳句が掛けてあるのも違和感が無いし、見ている人がそこまで注視するワケでもないから、あってもいいなって思いました。 CD 例えば、「南無阿弥陀仏」って書いてあったら?
土井 それは外します(笑)
シュ エイエイオーッの意図は?
土井 家族が来たから、よしやるぞっていう気合入れです。新しい家族には見えてないって思っているから。
CD きっと、失敗の経験もありますもんね。
石山 めげないなあ、この家族(笑)
シュ 土井さんは物語として、温かみがある作品が好きとお聞きしました。
土井 僕が作る作品の99%はそうです。観た人が幸せとか明るくなる話じゃないと、エンターテイナーとしてやる意味がないと思っています。世間一般的な悲劇とか、芸術的な作品を否定するわけじゃなく、どうせ観てもらうなら、幸せな気持ちになってもらいたい。心がぽっと温かくなってもらえる作品を作りたい。自分の舞台や、映像を作るときでも、基本的にそういう作品にしています。
シュ 最後の別れのシーンも、そんな思いで?
土井 悲しいのではなくて、田舎の家族がまたおいでねって。キャストにはちょっと笑いながら手を振ってくださいってお願いしました。
CD このシーン、新しい家族が枯山水に抜ける小さな門を使って帰るところなんか、山十邸を分かり尽くしている気持ちの自分でも、あれって思う。こんなところに門あったかなって。左右に広いというより、奥行きのある絵が多かったです。
土井 逆に、そういう風にしか撮れなかったんです。庭を映すと広く感じられてしまうから、なるべく庭を映さないようにしました。別れのシーンも、大きな門の方に行くと、広がり過ぎだし、普通の家の門としては大き過ぎる。だから、小さい門の方から出て行くというシーンを撮ったんです。
シュ にちじょうの古民家は、イメージとしてはどんな家?
土井 それこそ、まんが日本昔話に出てくるような古民家のイメージです。
シュ 最後に流れる音楽も良かったです。
石山 土井さんのオーダーに沿って僕が探しました。
土井 ギターの温かい感じでと。
石山 提出のリミットが迫る中、土井は曲探しにまで至らず、夜に稽古があるので行かなきゃいけない。だから、曲を見つける度にLINEで彼に送って。10曲ぐらいの中からチョイスしてもらいました。
シュ 音楽を使ったのはここだけですよね
土井 僕はお芝居勝負で、あまり音楽を使わないんです。音楽って、効果としてはいいものになるけど、使い過ぎてもお芝居がかすれちゃうなと、お尻だけになりました。
シュ 部屋に戻るシーンも素敵でした。
土井 あれはその場の流れです。家族たちが家に帰っているところをスローモー ションにする。その中で、薄井さんがアドリブで玉寄さんを見て…家族を気にしながら見る父親の感じをすごく出してくれて、良い締まり方でした。
石山 あれ、使ったのはワンテイク目だよね。開けてみたら、横に荷物が積み上がっていて…ツーテイク目は、荷物は無かったけど、芝居としてはワンテイク目がいい。だから、荷物の部分をきって、ワンテイク目にしました。しかし、みんないい顔してるなー。あ、薄井さんのシャツ(笑)
土井 僕のです(笑)
観る人が幸せな気持ちになる作品。心がぽっと温かくなる作品。土井監督のお話を聞いたとき、改めてムービー部門の応募作品を思い出してみました。シュニン個人の感覚として、そんな作品が非常に多かったような気がしました。
…あっ!忘れてた!応募のテーマ「愛」だったんだ…(笑)
たくさんの「愛」が集まった中から、最優秀賞を獲得した「にちじょう」。愛川レッドカーペットが、土井監督の制作スタイルとマッチングしたと言っても過言ではないような…気がします‼
そして、わずかですが「音楽」についてのコメントも注目しました。優秀賞「TOO MATCH」の宮原拓也監督のインタビューとの対比がとても興味深かったです。
次回、【うらばなし6】のテーマは、~へんしゅう~。OR→P作品のほぼ全ての編集を担う石山和史さんに、お話を伺っていきます。今回の応募作品の中で、編集が一番大変だったの果たしてはどの作品なのか!?メンバーの松下美優さん、武田良輔さんのコメントにも注目です!
【うらばなし5】のインタビューをPDFファイル(or印刷して紙)でも広めよう!愛川町役場庁舎内にも掲示中!最優秀賞「にちじょう」映像制作チームOR→Pインタビューうらばなし5(PDF版)
【うらばなし5】を聞いたら、「にちじょう」をもう1回観て、幸せな気持ちになりましょう♪
さらに…2019年5月30日!
「最優秀賞「にちじょう」映像制作チームOR→Pインタビュー うらばなし5 ~さつえい②~」に9件のコメントがあります